筑波大学は旧帝である

 「筑波は旧帝」という言葉を聞いたことがあるだろうか。筑波大生がネタで、あるいは見栄を張ってよく発している言葉だ。受験界で筑波大学は旧帝のワンランク下に位置し、他の旧帝以外の難関国立大学と一括りにされることが多い。それでも自分の大学を少しでも上に見せたい、思い込みたいという悲しき気持ちからこの言葉は発せられているのだ。

 しかし、私は本気で「筑波は旧帝」だと信じている。ここにその根拠を示し引け目なく「筑波は旧帝」だと言えるようになりたい。

 

旧帝とは

 筑波大学が旧帝であるかを議論する前に、まず最初に「旧帝」と呼ばれる大学についてまとめておこう。一般に旧帝とは以下の7大学のことを指す。

 これらの大学に共通するのは、どの大学も戦前に設立された帝国大学を前身とする旧帝国大学であることである。

 

筑波大学の前身

 では、我らが筑波大学の前身はというと、1872年に日本で最初に設立された師範学校を創起とする東京師範学校(のち東京教育大学[1]となっており、帝国大学ではない。そのため、広島大学神戸大学などとまとめて旧官立大学と呼ばれることもある。

 ……しかし、筑波大学は旧帝である。それをこれから証明しよう(一転攻勢)。

 

旧帝≠旧帝国大学

 最初に重要なポイントとして挙げられるのが、「旧帝」と「旧帝国大学」は等しくないということである。

 ……話についていけない人もいると思われるので、順を追って説明しよう。

 まず、「旧帝」とは受験業界で偏差値が近い大学をまとめて呼ぶための通称であり、帝国大学を前身とする大学であるかとは無関係であることを理解してもらいたい。

 なぜ無関係であると言えるのか、それを今ここで証明しよう。それはズバリ、「旧帝国大学でありながら旧帝に含まれていない大学が存在する」からである。旧帝をA,旧帝国大学をBと置くならば、∃x(x∈B∧¬(x∈A))、従ってA≠Bである。

……旧帝に含まれていない旧帝国大学など存在しない?そんなことはない。旧帝国大学とは実際には以下の9つの大学である。

 いかがだろうか。実は一般に旧帝と呼ばれる7校の他に2校の旧帝国大学が存在するのだ。ちなみに、ソウル大学校に至っては旧帝国大学とのつながりを否定してたりするがそんなことは関係ない。とにかく、旧帝≠旧帝国大学であることは証明できただろう。

 

旧帝とは

 さて、旧帝≠旧帝国大学であることが示されたことにより、いま一度「旧帝」という言葉の定義について考える必要が出てきたと言える。しかし、その定義とは一体何だろうか。改めて問われると答えに窮するかもしれない。そこで私は以下の3つの観点から旧帝か否かを判断するべきだと主張したい。その3つの観点とはこれだ。

  • 偏差値
  • 国際ランキング
  • 国からの評価

 どれも大学を評価する際によく使われる観点であり、旧帝と呼ばれる大学群を決めるのに相応しいと言えるだろう。では、一つずつ見ていこう。

 

偏差値

 最初は偏差値だ。身も蓋もないかもしれないが、結局のところ受験生が一番気にするのは偏差値である。これが事実である以上この観点は外せない。

 では、筑波大学と他の旧帝との偏差値を比較してみよう。以下の表をご覧いただきたい。これはベネッセの公開している大学偏差値[2]の国立文系と国立理系の一覧である。(理系は長いので2つに分割)

国立文系

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国立理系

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 お分かりいただけただろうか。筑波大学の偏差値は他の旧帝大と比較しても遜色ない。むしろ学部によっては一部の旧帝大を上回っており、偏差値という観点においては筑波大学を旧帝と語ることに何ら問題は無いだろう。

 

国際ランキング

 これからの時代、日本を飛び出して海外で活躍する若者が求められている。だとすれば、国際的な大学ランキングは大学を評価する際の目安として大いに役立つことは疑いようがないだろう。

 今回は、Times Higher Educcationが中心となって作成しているTHE世界大学ランキングという大学ランキングの日本版[3]を参考にする。このランキングはマスコミでも取り上げられることの多いランキングだ。その2019年の結果は以下の表のようになっている。

 

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 お分かりいただけただろうか。筑波大学の国際ランキングは非常に高く、旧帝大と遜色ないランクに位置している。国際ランキングという観点においても、筑波大学が旧帝であることは疑いようがない。

 

 

国からの評価

 最後に、国からの評価を見てみよう。国立大学は法的には国立大学法人という扱いになっており、学生からの学費等の他に国からの運営費交付金をもらって活動している。その国からどれだけの評価を受けているかは活動資金へと影響を与えるため各大学も気にしているだろう。日本国内において大学の価値を測る上で無視できない要素と言える。

 さて、国からの評価を語るためにまずは各大学の運営費交付金の額を見ていきたいと思う。以下に旺文社教育情報センターの記事[4]から抜粋した、各大学の運営費交付金一覧および運営費交付金の占有率状況を示す。

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 お分りいただけただろうか。筑波大学の運営費交付金額は旧帝大の中でも中央付近に位置する金額であり、また他の旧帝大と共に数ある国立大学への運営費交付金の大部分を占有している。運営費交付金という観点では旧帝大と言って差し支えない。

 

 また、国立大学長の報酬という観点においても語っておくべきことがある。国立大学が法人化する以前、国立大学長の報酬は指定職として号俸により金額が決まっていた。

 指定職とは、「その官職の職務と責任の度が特に高度であり、かつ、一般の職員に適用される扶養手当、住居手当と言った属人的な給与がなじまない官職について、職務給の理念に沿って官職毎に給与を定めることが望ましい」として創設された[5]区分である。早い話が、何号俸であるかによって給料が決まる。号俸が高い方が金額も多い。

 さて、国立大学学長の号俸は一体どの程度だったのかというと、東京大学および京都大学が12号俸、その他旧帝大(筑波を含む)が11号俸、他の大学は10,9,8号俸が割り当てられていた。そう、筑波大学長はその他旧帝大と同じ報酬となっていのである。

 国立大学長というのは非常に重要な職務であり、当然それに見合った報酬が支払われる。その上で筑波大学に他の旧帝大と同じ額を支払っていたのであれば、国は筑波大学旧帝大と同格と見なしていたことは疑いようがない事実であろう。

 

筑波は旧帝

 以上3つの観点から筑波大学を評価したが、どの観点においても筑波大学が他の旧帝大と同格の存在であることが示された。そして、旧帝とは旧帝国大学であることと無関係であることも既に示されている。だとしたら、筑波大学が旧帝でないと言えるのだろうか、いや言えない(反語)。よって、声を高らかに私は宣言しよう、筑波は旧帝だと!!

 

おわりに

 大学受験は人生のゴールではない。ぶっちゃけ旧帝卒だろうが何だろうが、ワンランクツーランクの大学のランクの違いは入学後の4年間の過ごし方で簡単に逆転する。だから、大学受験の結果に納得している人もしていない人も、卒業後を見据えて努力し、後から振り返って悔いの残らない大学生活を過ごしてほしい。

 その上で自分の大学の扱いにどうしても納得がいかないのであれば、自分の大学が旧帝だとか訳のわからないことを宣ったりするのもまた一興かもしれない。

 

 

引用

[1]筑波大学 - Wikipedia

[2]大学偏差値一覧から調べる | Benesse マナビジョン

[3]大学ランキング|THE世界大学ランキング 日本版

[4]http://eic.obunsha.co.jp/resource/viewpoint-pdf/201705.pdf

[5]指定職 - Wikipedia